近年、徐々に人気になりつつある不動産クラウドファンディングですが、日本以外ではどのような動きがあるのかご存知ですか?
今回は、アメリカの不動産クラウドファンディングについてご紹介していきたいと思います。
アメリカの市場について
世界の不動産クラウドファンディング市場は、2021年に100.78億米ドル、2022年に142億9,490万米ドルに達し、2023年には210億米ドルを超えました。
中でもアメリカは不動産クラウドファンディングの本場であり、世界市場の約4割を占めるほどです。
このことから、アメリカの市場がかなり活発化していることがわかります。
ここまでアメリカの不動産クラウドファンディングの市場規模が拡大したことには、いくつかの要因があります。
要因その①リーマンショック後に不動産投資の安定性
約16年前、2008年のリーマンショックをきっかけに、アメリカでは不動産投資にメリットを感じる人が増加しました。
株式投資よりも不動産投資のほうが、リーマンショック後の回復率が好調だったことが理由として挙げられています。
要因その②法整備や施策の実施
不動産クラウドファンディングにとって有利な施策が実施されてたことも、業界の成長を後押ししています。
新興成長企業の資金調達を円滑化するべく、2012年に証券法の適用除外、2022年のJOBS法4.0ではプラットフォームの規制の見直しなど、大幅な改革が行われました。
このような法整備により、投資家がオンラインで不動産クラウドファンディングに出資しやすくなり、新規投資家も増加しました。
要因その③中古市場
アメリカでは中古物件の市場が成熟していることも要因の1つに挙げられます。
アメリカの建築物は適切なメンテナンスを施すことで、年数が経っても価値が下がりにくい傾向があります。
このことから中古物件の流動性が高く、不動産クラウドファンディング上でも取引がしやすいように整備が行われました。
また、アメリカでは販売を開始した中古住宅すべての情報がデータベースに登録され、不動産会社に限らず誰でも閲覧可能となっています。
こうしたアメリカの中古市場の背景から、日本でも不動産IDの整備が進んでおり、メンテナンス履歴や過去の入居率などのデータを共有することで、中古住宅の価格が上昇する可能性があると考えられています。
要因その④コロナ禍でも高いリターンが得られた実績
コロナのパンデミックがあった際には、渡航制限や経済不安により不動産取引が停滞し、投資の市場全体に影響がありました。
その中でも不動産クラウドファンディングでは、既存不動産の再生や、コロナ禍で需要が高まったニッチな分野の不動産など、様々なファンドが展開されました。
先行き不透明な中でも高いリターンを得られることや、ポートフォリオを多様化できることなどが、不動産クラウドファンディングの業界を拡大させた追い風にもなっています。
要因その⑤IT技術の発展・活用の進歩
テクノロジーの発展によって、不動産クラウドファンディングがより効率的で使いやすい投資方法になりました。
投資家はオンラインで物件を探して簡単に投資することができ、運用の報告を定期的に受け取ることが可能です。
また、海外では多くの不動産クラウドファンディング・プラットフォームで暗号通貨を採用する傾向が強まっていることも、業界成長の要因の1つといえます。
アメリカ等海外の不動産クラウドファンディングへ投資可能なサイト
次にアメリカ等、海外の不動産クラウドファンディングへ投資することが可能な登録サイトをいくつかピックアップします。
今回挙げた登録サイト以外にも海外の不動産クラウドファンディングへ投資可能な登録サイトはたくさんあります。
海外の不動産クラウドファンディングを始める際の参考にしてみてください。
TECROWD(テクラウド)
公式サイト
期待利回り:年7.0%〜11.1%
最低投資金額(1口:100,000円
募集方法:先着
運用期間:3~30カ月
TECROWD(テクラウド)は、海外不動産クラウドファンディングだけに特化したクラウドファンディングの登録サイトになります。
全案件が海外不動産案件で、高利回りが狙えるクラウドファンディングとなっています。
最低投資額も10万円〜と気軽に投資することが可能です。
また、海外不動産の対象の国が個人で買える国とは違う国が多いのも魅力の1つです。
クラウドバンク
公式サイト
期待利回り:年3.0%〜8.0%
最低投資金額(1口):10,000円
募集方法:先着・抽選
運用期間:3~24カ月
日本の不動産プロジェクトと海外の不動産プロジェクトを両方扱っており、案件の数が多いことに定評があるクラウドファンディングになります。
案件数が多く、比較的安定した国(オーストラリア、カナダ、米国)のプロジェクトが多いため、利回りはそれほど高くありませんが、リスクも抑えられているクラウドファンディングといえます。
FUELオンラインファンド
公式サイト
期待利回り:年2.0%〜5.0%
最低投資金額(1口) :10,000円
募集方法:先着
運用期間:3~24カ月
基本的に物流施設の不動産プロジェクトが多く、利回りも低めですが、リスクが抑えられている不動産クラウドファンディングです。
海外不動産プロジェクトも、2割程度の割合で存在しますが、こちらも同じく利回りが低めで、海外不動産にチャレンジする意味合いが薄い点がデメリットになります。
選び方のポイント
①運用期間
不動産クラウドファンディングの運用期間は、一般的に3ヶ月~1年程度の短期と、2~3年の長期の2種類がありますが、中には10年という長期運用のファンドもあります。
3ヶ月~1年程度の短期運用は資金の拘束期間が短いため投資リスクが低く、結果が出るのも早いというメリットがある一方で、2~3年の長期運用は長期にわたって分配金を受け取れるため利益が高くなりますが、経済や市場の変化の影響を受けやすいというデメリットがあります。
不動産クラウドファンディングでは、原則として運用期間中の中途解約や譲渡はできません。
そのため、急な資金が必要になった場合でも、解約して現金化することはできません。
生活するのに必要な資金ではなく、余裕資金を充てたりするようにしましょう。
②運営会社の信頼度
始める前に運営会社の過去のプロジェクトの成功率やパフォーマンスを必ず確認してください。
長期間に渡って信頼度の高い運営会社は、リスクが少なくなります。
また、投資対象の国や地域での規制や認可を受けているかを確認することも大切です。
合法性や運営の透明性が確保されているかをきちんと見極めましょう。
③リターンの仕組み
定期的な配当を受け取れる仕組みか、最終的な売却時にキャピタルゲインを狙うものかを確認して、自分に合った方を選んでください。
利回りが高すぎる案件はリスクが高い可能性があるため、現実的な利回りのものを選ぶことが大切です。
※通常5~10%程度の利回りが目安となります。
④リスクの大きさ
投資対象国の経済不安や市場変動のリスクを考慮しましょう。
特に為替リスクも含め、円高や円安が投資にどのように影響するかを検討する必要があります。
投資後、すぐに現金化できるかどうかも重要です。
一般的に、不動産投資は流動性が低いため、資金を長期的に拘束される可能性があることを理解しておく必要があります。
⑤居住用不動産・商業用不動産
居住用不動産は比較的安定した収益が期待できますが、商業用不動産はリスクは高いものの、リターンも大きいことが一般的な見解です。
投資対象の国や地域の経済状況や不動産市場の成長見込みを必ず調べるようにしてください。
発展途上国の成長市場に投資するか、安定した先進国を選ぶかでリスクとリターンが異なります。
⑥税務上の問題
海外不動産投資の場合、国内外の税務に詳しくなる必要があります。
二重課税などを避けるためにも、投資対象国の税制や日本国内での申告義務などを事前に把握しておいて損はありません。
まとめ
2023年に約210億米ドルだった市場規模は、2036年までに約2兆7,247億米ドルに達すると考えられており、年平均成長率は2036年までの期間で50.1%と予測されています。
市場の拡大が期待されるのは、アメリカだけでなく、日本を含むアジア太平洋地域の市場が2036年末までに世界最大シェアを誇ると予測されています。
国内外問わず、プラットフォームの整備は今後も進むことが推測されるため、市場規模はますます拡大していくことでしょう。
不動産クラウドファンディングを始めるには、今が絶好のチャンスともいえます。
迷っている方は、すぐに始めるとこまではいかなくても、不動産クラウドファンディングがどういったものなのか、どうやって利益を得るかなど今のうちに調べるだけでも、いつか始めるときに役立つはずです。
また、日本の不動産クラウドファンディングしか投資をしたことがない人は、これを機にアメリカなどの海外に目を向けてみてはいかがでしょうか?
監修:越智正道
東京都文京区にて税理士事務所を経営。
ファイナンシャルプランナーとしても活動しながら、税理士業務では、記帳代行、試算表の作成、ペイロール代行、決算書類の作成、経営分析、税務申告など、多岐にわたるサービスを提供。
クライアントには、IT関連、ブライダル、化粧品開発、飲食業、医療関連など、さまざまな業種が含まれており
相続対策や事業承継、IPO支援、人事・労務管理指導などの分野の知見も広く持つ。
特に、NPO法人や金融資産関連の税務コンサルティングに力を入れており、幅広いニーズに応えることを使命としています。
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