不動産クラウドファンディングの市場規模ってどれくらい?

投資家が事業者に投資して、集まった資金で事業者が物件を購入し、得た利益を分配する、という流れを持つ不動産クラウドファンディング。
投資は結果が出るまでに多少の期間を要するため、投資後すぐに利益は得られませんが、投資後の手続きなどはすべて事業者が行うため、投資した側は何もせずに待つだけという大きな魅力もあります。
そんな不動産クラウドファンディングにおける市場規模はどのくらいあるのか、将来性はどれほどあるのか気になったりしますよね。
そこで今回は不動産クラウドファンディングの市場規模やその理由、背景について詳しく解説していきたいと思います。
日本だけでなく海外の市場についても触れていきますので、ぜひ最後までお付き合いください。

目次

日本における市場規模


2018年の時点の不動産クラウドファンディングの市場規模ですが、募集金額合計は約4.7億円で、ファンド数は27件、ファンドごとの平均募集額は約1,700万円でした。
しかし、その後の数年間で市場は急激に拡大し、2019年には募集金額が約35.4億円にまで増加、ファンド数も103件と約4倍近くに増えました。
この年のファンドごとの平均募集額も約3,400万円と大幅に増加しています。
さらに、2020年には募集金額が約77.9億円に達し、ファンド数も128件となり、ファンドごとの平均募集額は約6,000万円にまで拡大しました。その後も右肩上がりに拡大していき、2022年には募集金額が約615.6億円に達し、ファンドごとの平均募集額は1億に到達しました。
そして、2023年には募集金額が約966.4億円、ファンド数は706件、ファンドごとの平均募集額は約1.3億円と、引き続き堅調な成長を続けました。
最新の2024年の推計データでは、募集金額合計が約1,400億に超え、ファンド数も850件強と過去最高が予想され、ファンドごとの平均募集額も約1.6億円を超える見込みです。

海外における市場規模


米「Facts & Factors」によると、世界の不動産クラウドファンディング市場の規模は、2023年に約121億7,000万米ドルと評価されており、すでに日本円にして2兆円に迫る規模にまで拡大しています。
さらに、2024年から2032年にかけては年平均約45.2%で成長し、2032年までにその市場規模は3,492億6,000万米ドルにまで達すると予想されています。
中でもアメリカは不動産クラウドファンディングの本場であり、世界市場の約4割を占めるほどです。
このことから、アメリカの市場がかなり活発化していることがわかります。

不動産クラウドファンディングの本場


不動産クラウドファンディングは、北米や欧州で盛んとなっており、特にアメリカでは世界市場の約4割を占めるほど、不動産クラウドファンディングが規模を拡大しています。
アメリカで不動産クラウドファンディングが盛んな理由として、中古物件市場の成熟が挙げられます。
アメリカでは中古物件でも適切なメンテナンスによって物件価格が維持されることもあり、物件の流動性も高いです。
また、2008年に起こったリーマンショック以降、不動産に魅力を感じる人が増えたのも要因の1つといえます。
物件の流動性に加え、不動産投資をしたい投資家の増加も市場拡大の一因になります。
賃貸住宅等への投資を魅力と感じる人も多く、物件供給や投資家層のいずれも拡大の一途を辿っています。

不動産クラウドファンディングの市場が拡大する理由


次に不動産クラウドファンディングの市場が国内外問わず拡大していくのには理由があります。
その理由について見ていきたいと思います。

理由①不動産特定共同事業法(不特法)の整備
不動産特定共同事業法(不特法)とは、出資額を小口化した不動産について、投資家から出資を募り、売買・賃貸などの運用を行い、その収益を投資家に分配する事業について定めた法律です。
不動産クラウドファンディングなどの事業主の適切な業務運営を確保するとともに、投資家の利益保護が目的として施行されました。
この不動産特定共同事業には、任意組合型と匿名組合型の2つの事業形態が挙げられます。

【任意組合型】
投資家が出資した金額に応じた不動産の共有持分を購入して、所有する共有持分を組合に現物出資する形となっています。
事業者と任意組合契約を締結し、事業者は組合の代表として不動産の管理・運用を行います。
現物出資をする形式となるため、不動産の所有権は投資家にあります。
また、登記簿にも、投資家の名前が記載されるのが特徴です。
収益の分配金は不動産所得となるので、相続税や贈与税の節税対策として有効です。
節税対策や、複数の物件に分散投資できるのもメリットといえます。

【匿名組合型】
投資家が事業者と匿名組合契約を結び、組合に金銭を出資します。
その出資をもとに事業者は保有する不動産を賃貸などで運用して、収益を事業者と投資家の出資割合に応じて分配するという形式になります。
任意組合型と異なり、投資家に所有権がなく、収益の分配金は雑所得となるので課税の対象となります。
不動産クラウドファンディングでは、この匿名組合型が一般的です。
少額からの投資が可能な商品も多く、ほとんどの事業者が「優先劣後方式」を採用しているため、万が一収益減少や損失が出た場合でも、事業者が出資した割合まで先に負担することになりますので、投資家の元本の安全性がより高い投資方法といえます。

平成7年に不動産特定共同事業法(不特法)が施行されて以降、過去に3度の改正が行われました。
度重なる法改正により、事業者の参入要件が緩やかになり、不動産特定事業法に基づく不動産サービスが多く誕生することとなりました。
さらに、すべての申し込み・入金・分配金の受け取りまでがインターネット経由で完結するようになったため、投資家の負担も大幅に軽減しました。
こうした不動産特定共同事業法が整備されていったという背景が、不動産クラウドファンディング市場の拡大につながったものと考えられています。

理由②少額投資が可能
基本的には、マンションやアパートなどの現物不動産投資を行うためには、どうしても不動産の取得などの初期費用や、運営・管理のランニングコストで多額の投資費用が必要になってきます。
しかし、不動産クラウドファンディングは不動産を小口化した金融商品のため、1口1万円〜と少額で投資できるサービスが豊富に提供されています。
誰でも気軽に投資に参加することが可能なことが、市場拡大の理由の1つとなっています。

理由③元本割れのリスクが低い
他の投資手段では総じて元本割れのリスクがあるのに対し、不動産クラウドファンディングではそのリスクを軽減する優先劣後方式をとっています。
※優先劣後方式とは、匿名組合契約における出資区分のことです。
この仕組みでは、投資家が「優先出資者」、不動産クラウドファンディングの事業者が「劣後出資者」と位置付けられ、それぞれの出資金は別に管理されます。
優先出資者は劣後出資者に優先して分配を受けることができます。

理由④比較的利回りが高い
不動産クラウドファンディングは、比較的利回りが高い投資方法になります。
不動産クラウドファンディングでは、一般的に3%~8%ほどの利回りで運用しているケースがほとんどです。
利回りが5%のファンドに100万円の投資をした場合、単純計算で5万円の利益を得ることができます。
もちろん、不動産価格の下落や空室率の向上により、予定通りの利回りを実現できないこともありますが、預貯金よりも高い利回りが期待できます。

理由⑤大手企業の参入
不動産クラウドファンディングサービスの特徴として、上場企業や大手企業が運営しているサービスが増加していることも挙げられます。
上場企業や大手企業は倒産リスクが比較的低く、不動産事業の実績を生かした投資案件が豊富です。
有価証券報告書などのIR情報も充実しており、個人投資家が一定の信頼性をもって投資できる環境が整っているといえます。

理由⑥不動産情報の公開
不動産クラウドファンディングでは、投資対象となる不動産物件の情報が詳細に開示されています。
物件の所在地や築年数、土地や建物の面積などの情報も記載されているので、おおよその資産価値を事前に知ることが可能です。
また、公開されている物件を活用して、どのように収益をあげるのかについても開示されています。
投資判断をするための情報が公開されているため、不動産投資に詳しくない初心者でも投資しやすいのも特徴の1つです。

まとめ


不動産クラウドファンディングは、日本では認知され始めたばかりの比較的新しい投資商品です。
しかし先程説明したように、国内外のクラウド不動産ファンディングの市場規模は拡大の一途を辿っており、今後の成長がかなり期待できます。
今から始めたいと思っている方も、まだ遅くはありません。
市場が大きくなりきっていない今が一番のチャンスといえます。
まずは不動産クラウドファンディングの仕組みや流れをよく勉強し、少しずつ不動産クラウドファンディングの投資に慣れていき、生活をよりよくする1つの手段として活用してみてはいかがでしょうか?

監修:越智正道
東京都文京区にて税理士事務所を経営。
ファイナンシャルプランナーとしても活動しながら、税理士業務では、記帳代行、試算表の作成、ペイロール代行、決算書類の作成、経営分析、税務申告など、多岐にわたるサービスを提供。
クライアントには、IT関連、ブライダル、化粧品開発、飲食業、医療関連など、さまざまな業種が含まれており
相続対策や事業承継、IPO支援、人事・労務管理指導などの分野の知見も広く持つ。
特に、NPO法人や金融資産関連の税務コンサルティングに力を入れており、幅広いニーズに応えることを使命としています。

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