ゾンビ物件という存在をご存知でしょうか。
ゾンビ物件とは、資金繰りに行き詰まった不動産開発会社が建設途中でプロジェクトを放棄した不動産等を指します。
とくに中国ではこの現象が進行しており、「ゾンビ化」と呼ばれています。
不動産クラウドファンディングでこのようなゾンビ物件やゴーストタウンを活性化できるのか、そこに焦点を当てて見ていきたいと思います。
不動産クラウドファンディングとは?

不動産投資型クラウドファンディングとは、不動産特定共同事業の枠組みのなかで組成された仕組みのひとつです。
そのなかでもインターネットを通じて出資者を募る手法を「不動産投資型クラウドファンディング」といいます。
不動産投資型クラウドファンディングは、プロが選んだ複数の募集案件(物件)のなかから、投資対象物件を自身の目利きで選ぶことが可能です。
また、多くのクラウドファンディング業者は優先劣後方式を採用しており、不動産の運用によって損失が発生した場合も損失部分は劣後出資(事業者)から優先的に負担するため、投資家はリスク軽減できるというメリットがあります。
※不動産特定共同事業とは……
事業者が複数の投資家から出資を受けるなどして集めた資金で収益不動産を取得・運用し、そこから生まれた収益を投資家に分配する事業のこと。
不動産クラウドファンディングが社会に与える影響
不動産クラウドファンディングの概要を簡単に理解したところで、次は社会に与える影響について触れていきます。
主なポイントは下記3つになります。
①行政負担の圧縮
②資金調達難の解消
③地域経済の活性化
①行政負担の圧縮
まず1つめは、行政負担の圧縮にも貢献していることです。
歴史的価値の高い建築物の場合、自治体が保存や改修を行おうとしても、財政難のために実行できなかったり、維持できなかったりするケースが多々あります。
また、所有地を活用して、今後必要となる施設の開発を行いたいものの、施設へあまりコストをかけられない自治体が不動産クラウドファンディングを活用することで、自治体が目指す地域活性化を応援したい人々から資金を調達でき、行政負担を圧縮しながら重要なプロジェクトを推進することができます。
②資金調達難の解消
2つめは、不動産クラウドファンディングが発展することにより、事業者は資金調達難を解消しやすくなることです。
地方の物件や空き家などの開発に対しては、金融機関からの融資を受けにくいのが現状です。
また、仮に融資を受けられたとしても、担保価値が低いと融資額も少額になってしまう傾向があります。
こうした背景から、資金不足が原因で計画を断念せざるを得ないケースも少なくありません。
そこで不動産クラウドファンディングを活用することにより、全国の個人投資家から資金を集めることができ、地方の物件などに対する資金調達がしやすくなります。
③地域経済の活性化
最後の3つめですが、不動産クラウドファンディングは地域経済の活性化を促すことができます。
不動産クラウドファンディングを利用することにより、地域住民自身がプロジェクトに対して直接投資することが可能となり、結果として地域に対する関心や責任感が高まりやすくもなります。
また、地域住民が投資に参加することによって、プロジェクトそのものが地域の文化や歴史を尊重したものであるか、地域に根ざした持続可能な開発であるかという意識が加わり、より質の高い街作りを期待することができます。
このような点から、不動産クラウドファンディングを通してゾンビ物件になることを阻止したり、ゴーストタウンを活性化することが可能になってくるのです。
個人投資家へのメリット

不動産クラウドファンディングはゾンビ物件の阻止やゴーストタウンの活性化だけでなく、個人投資家へのメリットもあります。
メリット①1口1万円から投資が可能
登録サイトによっては投資金額が1万円からでも可能なため、少額で始めることができます。
不動産投資に興味があっても、高額な投資用のお金が用意できない方もいます。
不動産クラウドファンディングは1万円からでも投資可能なので、初めての投資にもぴったりです。
ただし分配される利益は投資金額に応じて変わるため、少額出資の場合はそれほど利益を得ることができません。
まずは少額から始め、利益を出資額に回していき、少しずつ出資額を増やしてしていきましょう。
メリット②利回りが高い
不動産クラウドファンディングは想定利回りの高いファンドを取り扱う会社が多いため、そのようなファンドに投資すれば多くの利益を得ることができます。
利回りが高ければ高いほど多くの分配金が得ることができ、メリットも大きくなります。
利回りは投資前に確認できるため、どのくらいの利益が見込めるかを事前に確認しておくことも大切です。
※利回り……投資した金額に対する利益のこと。
メリット③手間がほとんどない投資
マンションやホテルなど、物件を管理する手間なく投資を楽しむことができます。
物件を管理するとなると、手間がかかるうえに、維持するランニングコストも必要になってきます。
時には建物の修繕費としてまとまったお金を捻出しなければならないため、得た利益も貯蓄しておかなければなりません。
しかし不動産クラウドファンディングは物件管理の手間がなく、ただ利益の分配を待つだけです。
建物の管理などはすべて事業者が行うため、面倒なことをする必要はありません。
メリット④元本割れのリスクが低い
他の投資手段では総じて元本割れのリスクがあるのに対し、不動産クラウドファンディングではそのリスクを軽減する優先劣後方式をとっています。
多くの事業者が優先劣後方式を採用しており、この仕組みによって元本割れのリスクが軽減されるため、投資家にとっては大きなメリットになります。
※優先劣後方式……匿名組合契約における出資区分のこと。
メリット⑤個人投資できないものにも投資可能
一般的に、商業施設・ホテル・病院などに個人投資するには莫大な費用がかかる、商業施設・ホテル・病院などにも投資が可能になります。
資金調達や物件を購入した際に発生する決済や不動産投資などの、難しい手続きもなく、投資が可能です。
メリット⑥運用期間
不動産クラウドファンディングでは、運用期間中は出資金が拘束されます。
基本的には運用期間中は資金を手元に戻すことは難しいです。
不動産クラウドファンディングは長期運用と短期運用があり、短期運用の案件を選択すれば早めに手元にお金が戻ってくるため、万が一お金が急に必要になってしまう場合にも備えやすくなります。
また、不動産クラウドファンディングでは日々新しい投資案件が募集されており、出資した案件の運用期間中にも、より魅力的な条件の案件が見つかるかもしれません。
そういう場合に、短期運用の案件であれば他に資金を回しやすくなります。
投資家に向いている人とは?
最後に投資家に向いている人についてです。
ゾンビ物件を阻止したい、ゴーストタウンを活性化したい、ついでに利益も出たら嬉しい、その気持ちだけでは不動産クラウドファンディングを行うことはできません。
最低限の知識を頭に入れることも必要です。
そこで、不動産クラウドファンディングだけでなく、投資家として向いている人の特徴をご紹介します。
ぜひ今後の参考にしてみてください。
①勉強熱心
投資商品は、株や債券、不動産などさまざまな種類がありますが、投資商品の選択や商品ごとの運用方法、リスクの回避策など、学ぶべきことは山程あります。
また、投資環境は変化するため常に情報収集も欠かせません。
そのため、怠慢せずに熱心に勉強することが求められます。
②好奇心旺盛
新しい知識や情報に興味を持ち、投資に関する勉強を自ら進んで継続できる人は投資に向いています。
常に好奇心旺盛に情報を吸収することが大切です。
③自己判断と決断
投資には自分なりの判断基準(期待する利益や許容できるリスク、運用期間、運用商品を選択する基準など)を持つことが重要です。
人の意見に流されると、判断基準がぶれてしまい、自分の判断基準に基づいた投資ができなくなります。
人の意見を聞くことも大切ですが、時と場合にもよることを念頭に置きましょう。
④情報収集能力
投資に関する情報は、ニュースや新聞、インターネットの情報サイトなど、様々なところにたくさん溢れています。
しかし中には、正しい情報だけでなく、誤った情報や偏りのある情報も含まれていることも事実。
そのため、正しい情報を選択できずにいると、投資に失敗する可能性は一段と高くなります。
日頃から複数の情報源で事実を確認したり、客観的に情報を分析する習慣がある人は適性があると思います。
⑤資金
何事も始めるには、まず資金が必要です。
資金に余裕があれば、購入した商品が値下がりしたときに、我慢して値上がりするのを待つことができますが、余裕がないと売却しなければなりません。
投資で利益を上げるには、適切な時期に運用商品を購入&売却することが最も重要となってきます。
商品が安いときに買い、高いときに売れば利益が出るのは小学生でも分かることです。
余裕のある資金で投資していれば、商品が値下がりした時に、手元の現金を確保するため焦って売却する必要はなくなります。
そのため、まずは投資に回しても問題ない資金を集めるところから始めましょう。
⑥冷静な投資
お金に執着しすぎると、損失が出た時に慌ててしまい、冷静な判断ができなくなることがあります。
損を取り戻そうと後先考えずに投資を繰り返す、損失を確定させるのが嫌で適当な時期に損切りできない、などといった状況に陥ると損失が拡大するリスクがあります。
いざというときほど、冷静な判断が必要となってきます。
⑦挫けない忍耐力
投資で大きな損失を出して、投資嫌いや投資恐怖症になる人がいるのは確かです。
失敗を恐れて投資を辞めてしまえば、そこで終わってしまいます。
投資にリスクはつきものであることをきちんと認識して、失敗してもその反省を糧に我慢強く投資を継続することが重要です。
忍耐強い人や失敗を前向きに捉えて、失敗してもくじけずに次に活かそうとする人は、投資家向きだと言えます。
まとめ

いかがでしたでしょうか。
不動産クラウドファンディングは1口1万円から気軽に始めることができる不動産投資ですが、最低限の知識ももちろんのこと必要となってきます。
きちんと知識を得た上で、ゾンビ物件の阻止やゴーストタウンの活性化への協力をしつつ、利益を得るウィンウィンな関係を築いていきましょう。
監修:越智正道
東京都文京区にて税理士事務所を経営。
ファイナンシャルプランナーとしても活動しながら、税理士業務では、記帳代行、試算表の作成、ペイロール代行、決算書類の作成、経営分析、税務申告など、多岐にわたるサービスを提供。
クライアントには、IT関連、ブライダル、化粧品開発、飲食業、医療関連など、さまざまな業種が含まれており
相続対策や事業承継、IPO支援、人事・労務管理指導などの分野の知見も広く持つ。
特に、NPO法人や金融資産関連の税務コンサルティングに力を入れており、幅広いニーズに応えることを使命としています。
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