不動産クラウドファンディングで得た収益、「確定申告ってどうすればいいの?」と不安に感じていませんか?
実は、多くの投資家が申告ミスにより、余分な税金を払ったり、損失を相殺できなかったりと、思わぬ損をしているのが現実です。
本記事では、収入区分の判断や経費の計上、損益通算の基本から、よくある失敗例とその対策、さらには節税テクニックまでを徹底解説。
初心者からベテランまで、誰もが知っておくべき「確定申告の落とし穴と守り方」をご紹介します。
不動産クラファンの収益はどう分類される?

不動産クラウドファンディングで得られる収益は、所得税法上「配当所得」または「雑所得」に分類されます。
この分類は申告の際に非常に重要な要素であり、間違えると課税額が大きく変わってしまう可能性があります。
・・・にもかかわらず、多くの投資家がこの区分でつまずいており、申告ミスの主因にもなっています。
所得区分の基本知識
例えば、匿名組合型の投資契約で運用されている案件では、分配金は「雑所得」に該当します。代表的なプラットフォームでいえば、OwnersBookやCOZUCHIの一部案件がこれに該当します。
一方で、利益の分配が出資に対する配当という形式を取っている案件、たとえばCREALやGAIAファンディングのような形式では「配当所得」に分類されるケースもあります。
この分類がなぜ重要かというと、選べる課税方法が異なるためです。配当所得の場合、総合課税か申告分離課税かを選ぶことができます。
総合課税は他の所得と合算し、所得控除を活用できる反面、所得が高いほど税率が上がる点に注意が必要です。一方で、申告分離課税では一律20.315%の税率が適用され、計算がシンプルで予測もしやすくなります。
雑所得として申告する場合
一方、雑所得として申告する場合は、基本的には総合課税が前提となります。年収が比較的低い方や、控除が多い方は有利になることもありますが、損失が出ても他の所得(給与など)との損益通算ができないという制約があります。
さらに、雑所得では損失の繰り越し控除も認められていない点も重要です。
また、投資規模が非常に大きく、継続的な投資活動として認定される場合、収益が「事業所得」に分類されることもあります。これは例外的なケースですが、事業所得であれば経費計上や損益通算・繰越控除などの幅が広がるため、該当しそうな場合は税理士など専門家に相談する価値があります。
正しい所得区分の判断は、確定申告の第一歩であり、税負担を最適化するための出発点です。
各プラットフォームが発行する「年間取引報告書」や「税務ガイドライン」を活用し、自分が受け取った収益の区分を必ず確認するようにしましょう。投資の成果を無駄にしないためにも、正確な区分把握は欠かせません。
やりがちな確定申告ミスとその対策

不動産クラウドファンディングで得た収益を申告する際、多くの投資家が陥りがちなのが「思い込み」によるミスです。
収益の区分が分かったとしても、実際の申告段階で見落としや勘違いが発生すれば、本来支払わなくてもよかった税金を納めてしまうことも。
損しないための基本ルール
ここでは、特によく見られるミスとその対策を具体的に紹介します。
① 源泉徴収済み案件の“二重申告”
一部のプラットフォーム(COZUCHI、CREAL、FANTAS fundingなど)では、分配金に対して20.315%の源泉徴収があらかじめ行われています。
このような場合、基本的に確定申告は不要とされることもありますが、「還付が受けられるかも」と思って申告を行った結果、計算を誤って二重課税となるケースが少なくありません。
対策としては、プラットフォームが提供する**「支払調書」や「年間取引報告書」**を必ず確認し、すでに納税済みの金額を正確に記入することが大切です。
② 経費の計上漏れ
意外と多いのが、「経費にできるはずの支出を計上していない」パターンです。不動産クラファン関連の情報収集に使った書籍代やセミナー参加費、ネット通信費やPC・スマホの減価償却費の一部などは、条件を満たせば必要経費に含めることが可能です。
とくに年間を通じてプラットフォーム利用料や振込手数料を支払っている場合、それらも立派な経費です。少額でも積み重なると大きな差になります。
支出の記録はレシートや請求書を残しておき、エクセルやクラウド家計簿アプリで管理するとよいでしょう。
③ 損益通算の未活用
不動産クラファンに限らず、複数の投資先を持つ投資家に多いのが、損益通算を忘れることです。
たとえば、FUNDINNOで得た利益と、クラウドクレジットでの損失がともに「雑所得」であれば、損益を相殺できます。この処理を怠ると、本来納めなくてよい税金を支払ってしまう恐れがあります。
④ 所得区分の誤認と重複申告
第1章でも述べたように、「雑所得」と「配当所得」「事業所得」の区分ミスもミスの温床です。
さらに、「NISA口座」や「特定口座(源泉徴収あり)」での投資収益を、うっかり再申告してしまうケースも散見されます。特定口座であれば本来、申告不要となる場合もあるので、各プラットフォームの案内を必ず確認しましょう。
初心者がつまずく申告ステップを徹底解説

確定申告を行う際に多くの初心者がつまずくのが、実際の申告書の作成手順や書類の種類です。
不動産クラウドファンディングの収益は、所得区分ごとに使用する申告書や記載場所が異なり、さらに経費や源泉徴収の処理まで含めると複雑に感じられるかもしれません。
しかし、手順を分解して理解すれば、決して難しいものではありません。
申告書の書き方と提出方法
まず必要となるのは「確定申告書B」です。これはすべての所得区分に対応している汎用的な申告書であり、給与所得者であっても副収入がある場合はこちらを使用します。
不動産クラファンの収益が「雑所得」として扱われる場合、申告書Bの第二表「所得の内訳」欄に金額を記入します。
収益の明細(プラットフォーム名・収入額・経費など)は別紙にて提出するのが望ましいでしょう。
一方、「配当所得」に該当する場合は、第三表(分離課税用)の提出が必要となることがあります。配当所得は総合課税と申告分離課税を選べるため、自身の所得状況を踏まえ、有利な方を選択してください。
たとえば年収が330万円以下の人が申告分離課税を選ぶと、実効税率が高くなってしまうケースもあります。
源泉徴収済みの収益
ここで重要なのが源泉徴収済みの収益の処理です。例えば、CREALなどのプラットフォームで20.315%の源泉徴収が行われている案件については、すでに一定額の税金が支払われています。
これを確定申告の「所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額」欄に正しく記載すれば、過払い分が還付される可能性があります。反対に、申告漏れがあると過大納税や追徴課税の対象になることも。
必要書類の準備
初心者がもうひとつ混乱しやすいのが必要書類の準備です。必須となるのは、以下の書類です:
- 各プラットフォームが発行する「年間取引報告書」や「分配金明細」
- 経費の証明となるレシートや領収書
- 本人確認書類(マイナンバーカードまたは通知カード+身分証)
これらはすべて、事前にファイルなどで整理しておくことをおすすめします。とくに複数のプラットフォームを利用している場合、収益を一覧表にまとめておくと転記作業がスムーズになります。
確定申告の方法
確定申告の方法には、紙提出・e-Tax(電子申告)・税務署窓口提出の3種類があります。おすすめはe-Taxです。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、質問形式で入力していくだけで自動計算・帳票出力が可能。さらに、マイナンバーカードを持っていれば電子送信も可能で、郵送や持参の手間が省けます。
特に申告期限(例年3月15日)ギリギリになると、システムや窓口が混雑しやすくなるため、2月中には準備を始めるのが理想的です。早めの着手が、心の余裕とミス防止につながります。
NISA・特定口座を使っている人、税理士に相談すべき人へ
不動産クラウドファンディングの中には、NISA口座や特定口座(源泉徴収あり)を利用できるプラットフォームも存在します。これらは運用益に対して課税されない、または既に納税が完了している場合が多く、確定申告が不要なケースもあります。
しかし、これを知らずに申告してしまうと二重課税や無駄な申告作業につながるおそれがあります。利用している口座種別を確認し、必要に応じて「申告不要」の選択肢を検討しましょう。
また、投資額が大きい方や所得区分に不安がある方は、早めに税理士へ相談するのも有効です。不動産投資に強い税理士であれば、控除の最大化や申告方法の最適化までアドバイスが受けられます。
確定申告期(2月〜3月)は混雑するため、1月中の相談予約をおすすめします。
節税につながる賢いテクニック

不動産クラウドファンディングで得た利益を最大化するためには、「税金で損をしないこと」が大切です。せっかくの投資成果も、確定申告での処理を誤れば手元に残る金額が大きく目減りしてしまいます。
所得税&住民税対策の基礎
この章では、誰でも実践できる節税テクニックを紹介します。
① 総合課税 vs 分離課税の選択で得をする
収益が「配当所得」として扱われる場合、課税方式を選べるのが大きなメリットです。たとえば、年収300万円未満の方が申告分離課税(一律20.315%)を選ぶと、むしろ税負担が高くなるケースがあります。
一方で、医療費控除やふるさと納税などの所得控除を活用して総合課税にすることで、実効税率が下がり、還付を受けられる可能性も。自分の年収と控除状況に応じて有利な方式を選びましょう。
② 経費計上で課税所得を圧縮
不動産クラファンで発生する経費は、条件を満たせば必要経費として認められます。具体例を挙げると、
- 投資セミナーの参加費
- 関連書籍代
- プラットフォームの会員費や手数料
- スマホ・PCの一部購入費(按分)
- 通信費(インターネット回線などの一部)
などが挙げられます。経費を漏れなく計上すれば、課税対象となる所得が減り、結果として納税額も抑えられます。
ただし、プライベートとの明確な区分ができることが前提となるため、領収書は必ず保管し、使途も記録しておきましょう。
③ ふるさと納税と組み合わせて控除強化
クラウドファンディングの利益が増えると、所得税・住民税が上がるケースもあります。そこでおすすめなのが、ふるさと納税との併用です。
たとえば5万円の寄附をすれば、約4.8万円が住民税・所得税から控除され、さらに返礼品も受け取れるという実質的な節税+リターンの効果が得られます。確定申告時に寄附金控除の欄を忘れず記載しましょう。
④ 損失繰越と通算の理解
「損益通算」は雑所得内でのみ可能で、給与所得などとは相殺できません。一方、「繰越控除」は雑所得には適用されず、「事業所得」や「不動産所得」に限られます。
つまり、不動産クラファンでの損失は基本的に翌年に繰り越せないため、今年中に雑所得内で利益と相殺するしか方法がないのです。
この点を踏まえて、複数のプラットフォームを併用している場合は、損失が出ている案件がないか、年末までに一度精査しておくのが賢明です。
⑤ 住民税申告不要制度もチェック
特に副業収入がある方にとって、住民税の増加は会社にばれるきっかけになることも。住民税の申告不要制度を選ぶことで、本業に影響を与えずに副収入を申告できます。
申告書の「住民税に関する事項」欄を見落とさないよう注意しましょう。
まとめ

不動産クラウドファンディングの収益は、一見すると少額で簡易なものに見えますが、確定申告の段階で予想以上に複雑な処理が求められます。
所得区分の誤認、経費計上の漏れ、源泉徴収済み案件の二重申告、損益通算の失念など、ちょっとした見落としが税負担増や追徴課税の原因になりかねません。
その一方で、課税方式の選択や経費の適正な処理、ふるさと納税の活用など、正しい申告を行えば節税効果を享受することも可能です。
申告にあたっては、各プラットフォームが提供する税務資料を活用し、収益や支出を可視化したうえで、余裕を持って準備を進めることが重要です。
特に複数プラットフォームを利用している場合は、年間の取引履歴を一覧表にまとめておくと、作業効率が格段に向上します。不明点があれば税理士への相談も視野に入れ、自分の投資成果を最大限守る意識を持ちましょう。
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