サブリース契約中の物件の売却は「できない」わけではありませんが、一般的な物件とは異なる注意点が存在します。
収益性の低さから売却価格が下がる傾向や、貸主側から簡単には解約できない法的な制約があるためです。
しかし、契約を維持したまま売る方法や、交渉して解除する方法を理解すれば、有利な条件での売却も可能です。
この記事では、サブリース物件の売却が難しい理由から、契約解除の具体的なコツ、違約金の相場までを解説します。

そもそもサブリース物件の売却が難しいと言われる3つの理由
サブリース物件の売却が市場で敬遠されがちなのには、明確な理由が存在します。
主な要因は「収益性」「買主の限定」「契約の制約」という3つの側面に集約されます。
これらの点が、一般的なオーナーチェンジ物件と比較して売却活動を難しくさせ、価格にも影響を与えます。
なぜ売却が困難になるのか、具体的な理由を掘り下げていきましょう。
理由1:収益性が低く、物件の査定価格が2割ほど下がる傾向にあるから
サブリース契約では、サブリース会社がオーナーに支払う賃料から10~20%程度の手数料を差し引きます。
このため、オーナーが直接入居者に貸し出す場合に比べて手取り収入が減り、物件の実質的な利回りが低下します。
不動産の査定価格は、多くの場合、その物件が生み出す収益を基に算出される「収益還元法」が用いられます。
利回りが低いと物件の収益性も低いと評価され、結果として査定価格が市場価格より2割ほど下落する傾向にあります。
理由2:買主が投資目的の法人などに限定され、買い手が見つかりにくいから
サブリース契約付きの物件を購入するということは、サブリース会社との契約内容をそのまま引き継ぐことを意味します。
買主は自ら入居者を選んだり、賃料を設定したりする自由がありません。
そのため、より高い利回りを求めて自由に物件を運営したい個人投資家からは敬遠されがちです。
結果として、購入検討者はサブリース契約のメリットを理解している一部の投資法人や、サブリース会社自身などに限られてしまい、買い手の範囲が狭まることで売却が難しくなります。
理由3:貸主(オーナー)から簡単に解約できず、売却の自由度が低いから
サブリース契約(マスターリース契約)は、借地借家法が適用される賃貸借契約です。
この法律は借主(サブリース会社)の権利を強く保護しているため、貸主(オーナー)の一方的な都合で契約を解約することは原則として認められません。
オーナー側から解約を申し出るには、建物の老朽化など、社会通念上やむを得ないと判断される「正当事由」が必要です。
このように解約のハードルが高いことが、売却のタイミングや方法を自由に選べなくさせ、売却活動全体の自由度を著しく下げています。
【あなたはどっち?】サブリース物件を売却する2つの選択肢
サブリース契約中の物件を売却するには、大きく分けて2つの方法があります。
一つは「サブリース契約を維持したまま売却する」方法、もう一つは「サブリース契約を解除してから売却する」方法です。
どちらの選択肢が最適かは、オーナーの状況や物件の特性、売却にかけられる時間や費用によって異なります。
それぞれの特徴を理解し、自身のケースに合った戦略を立てることが重要です。
選択肢①:サブリース契約を維持したまま売却する
この方法は、サブリース会社との契約を新しい買主にそのまま引き継いでもらう形で物件を売却する選択肢です。
オーナーにとっては、解約交渉の手間や違約金のリスクを負うことなく、現状のまま売却活動を進められる点がメリットです。
特に、空室リスクを避けたい場合や、早期に売却を完了させたい場合に有効な手段となります。
ただし、サブリース契約付きであることが、売却価格の交渉で不利に働く可能性も考慮しなくてはなりません。
選択肢②:サブリース契約を解除してから売却する
この方法は、まずサブリース会社との契約を合意解除した上で、通常のオーナーチェンジ物件として市場で売却する選択肢です。
買い手は自由に物件を運営できるため、より広範な投資家層にアプローチでき、市場価格に近い高値での売却が期待できます。
その一方で、解約時にはサブリース会社との交渉が必要となり、違約金や立退料の支払いが発生する可能性があります。
時間とコストがかかる点を踏まえ、計画的に進めることが売却成功の鍵となります。
サブリース契約を維持したまま売却するメリットと注意点
サブリース契約を解約せずに売却する方法は、手間やリスクを抑えたいオーナーにとって魅力的な選択肢です。
しかし、メリットだけでなく、価格面でのデメリットも存在します。
このアプローチを選ぶ際は、利点と注意点の両方を正確に把握し、自身の物件がこの方法に適しているか慎重に判断することが求められます。
メリット:空室リスクや入居者対応の心配なく売却活動ができる
サブリース契約を維持する最大のメリットは、売却活動中も家賃収入が保証される点です。
空室の有無にかかわらず、サブリース会社から毎月一定の賃料が支払われるため、収入が途絶える心配がありません。
これにより、買い手が見つかるまでの期間も安定したキャッシュフローを確保できます。
特に複数の部屋があるアパートなどの場合、空室リスクを気にすることなく、落ち着いて売却活動に専念できるのは大きな利点です。
また、入居者との直接のやり取りも不要なため、手間をかけずに済みます。
注意点:契約内容が不利だと売却価格の大幅な値下げに繋がりやすい
サブリース契約を引き継ぐ買主は、契約内容を詳細にチェックします。
保証されている賃料が周辺の家賃相場より著しく低い、数ヶ月にわたる免責期間が設定されている、あるいは賃料の見直し条件がオーナーに不利な内容であるなど、契約内容に問題があれば、それはそのまま物件の欠点となります。
買主はこれらの不利な点を指摘し、大幅な価格交渉の材料としてくる可能性が高いです。
契約時の内容が現在の市況に合っているか、不利な条項がないかを確認しておくことが重要です。
サブリース契約を解除して高く売るための4ステップと交渉術
サブリース契約を解除して売却する方法は、高値での売却に繋がる可能性があります。しかし、サブリース契約の解除には法的な知識と計画的な交渉が不可欠です。借地借家法が適用されるため、オーナーからの解約は容易ではなく、正当事由が必要となるケースや、サブリース会社が解約に応じないケース、高額な違約金が発生するケースもあるため、慎重な検討が必要です。契約内容の確認から始まり、正当事由の準備、資金計画、そして正式な通知というように、段階を踏んで進める必要があります。
ここでは、その具体的な4つのステップと交渉のポイントを解説します。
ステップ1:契約書で「中途解約条項」の有無を真っ先に確認する
最初にすべきことは、サブリース会社と交わしたマスターリース契約書の確認です。
特に、オーナー側からの「中途解約」に関する条項を重点的にチェックします。
多くの場合、「解約は6ヶ月前の予告をもって行う」といった記載や、違約金に関する規定が設けられています。
マスターリース契約は建物賃貸借契約であり借地借家法が適用されるため、貸主から解約する権利が契約で認められていたとしても、貸主からの解約申し入れには正当事由が必要とされています。したがって、中途解約に関する条項の有無と内容が、今後の交渉の方向性を決定づける重要な要素となります。
ステップ2:貸主側の「正当事由」を明確にして解除交渉に臨む
借地借家法上、貸主からサブリース契約の解約や更新拒絶を申し出るには「正当事由」が求められます。
単に「物件を高く売りたいから」という理由だけでは、正当事由として認められる可能性は低いです。
認められやすい事由としては、「建物の老朽化が著しく、大規模な修繕や建て替えが必要」「オーナー自身が生活に困窮しており、物件を売却して現金化する必要がある」といった、客観的に見てやむを得ない事情が挙げられます。
説得力のある正当事由を準備し、交渉に臨むことが重要です。
ステップ3:違約金の相場(家賃6ヶ月〜1年分)を把握し、資金を準備する
契約書に違約金の規定がある場合はその金額に従いますが、規定がない場合でも、サブリース会社が解約に応じる条件として、いわゆる「立退料」が要求されることがあります。これは、サブリース会社が入居者との契約を解除するために発生する費用などを補填するものです。立退料の目安として賃料の数か月分とする例が見られますが、法的に定められた一定の相場があるわけではありません。ただし、賃料の1年分など高額なケースも存在します。
例えば、契約期間が5年残っている場合でも、これらの状況を基準に交渉が進められます。解約を円滑に進めるため、事前にこの程度の資金を準備しておく必要があるでしょう。
ステップ4:内容証明郵便で「契約解除通知書」をサブリース業者へ送付する
サブリース会社との間で解約の交渉を進める意思を固めたら、その意思を正式に書面で通知します。
この際、普通郵便ではなく「内容証明郵便」を利用することが推奨されます。
内容証明郵便は、いつ、誰が、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が公的に証明してくれるサービスです。
これにより、「通知を受け取っていない」といった後のトラブルを防ぎ、解約交渉を正式に開始した証拠を残せます。
任意売却のような特殊な状況下でも、法的な手続きを明確にする上で有効です。
サブリース物件の売却を成功に導く不動産会社の選び方
サブリース物件の売却は、専門的な知識と経験が求められるため、パートナーとなる不動産会社選びが成功を大きく左右します。
一般的な不動産売却とは異なる特有の課題を理解し、オーナーの利益を最大化するための戦略を提案してくれる会社を見つけることが不可欠です。
ここでは、信頼できる不動産会社を選ぶための3つのポイントを紹介します。
サブリース物件の取り扱い実績が豊富な会社に相談する
サブリース物件の売却には、借地借家法に関する知識や、サブリース会社との解約交渉ノウハウが不可欠です。
したがって、過去にサブリース物件の売買仲介を手がけた実績が豊富な不動産会社に相談することが最も重要です。
実績のある会社は、解約交渉の落としどころや、契約を引き継ぐ場合の買主へのアピール方法などを熟知しています。
会社のウェブサイトで取引事例を確認したり、最初の相談時に具体的な実績について質問したりして、経験値を見極めましょう。
できるだけ高く売るなら複数の不動産会社に査定を依頼する
物件の売却価格は、不動産会社によって査定額が異なることが少なくありません。
1社のみの査定では、提示された金額が適正な市場価値を反映しているのか判断が難しいです。
そのため、少なくとも2〜3社の不動産会社に査定を依頼し、査定結果を比較検討することをおすすめします。
複数の査定額を比較することで、物件のおおよその相場観を把握できるだけでなく、各社の販売戦略や担当者の対応力も見極めることができます。
不動産一括査定サイトを利用すると、手間をかけずに複数の会社へ依頼できます。
早期売却を目指すなら「買取」も選択肢に入れる
売却活動をしてもなかなか買い手が見つからない場合や、相続などの事情で早急に現金化したい場合には、「買取」も有効な選択肢となります。
買取とは、不動産会社が直接買主となって物件を買い取る方法です。
仲介のように買主を探す必要がないため、最短で数週間程度での売却が可能です。
ただし、買取価格は市場価格の7〜8割程度になるのが一般的です。
スピードを優先する代わりに価格が下がる点を理解した上で、仲介による売却と並行して検討するとよいでしょう。

サブリース 売却に関するよくある質問
サブリース物件の売却を検討する中で、多くのオーナーが抱える共通の疑問があります。
ここでは、違約金の支払いや住宅ローンの問題、手続きの順序といった、特によくある質問について簡潔に回答します。
Q. サブリース契約の違約金は、必ず支払わなければいけませんか?
契約書に違約金に関する条項が明記されている場合、原則として支払い義務が生じます。
条項がない場合でも、貸主都合の解約はサブリース会社に損害を与えるため、交渉の過程で立退料などの名目で同等額の支払いを求められるケースがほとんどです。
法的に支払い義務がなくても、円満な解約のために支払いに応じることが多いのが実情です。
Q. ローンが残っていてもサブリース物件は売却できますか?
ローンが残っていても売却は可能です。
売却によって得た代金でローン残債を一括返済できれば何の問題もありません。
マンション等の売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」の状態でも、不足分を自己資金で補填できれば売却できます。
自己資金がない場合は、金融機関の合意を得て「任意売却」という手続きを進めることになります。
Q. 売却と解約、どちらの手続きを先に進めるべきですか?
高く売ることを優先するなら、サブリース契約を解約し、買主の自由度が高い状態で売却活動を始めるのが理想的です。
ただし、解約には時間と費用がかかるため、先に解約してしまい買い手が見つからないリスクもあります。
そのため、不動産会社と相談し、購入希望者が見つかることを条件に解約交渉を進めるなど、戦略的に進めることが重要です。
まとめ
サブリース物件の売却は、収益性の問題や契約上の制約から難しい側面がありますが、決して不可能ではありません。
売却方法には「契約を維持したまま売る」か「契約を解除してから売る」かの2つの選択肢があり、それぞれにメリットと注意点が存在します。
自身の物件の状況や売却の目的を明確にし、どちらの方法が適しているかを見極めることが重要です。
特に契約解除を目指す場合は、法的な知識と計画的な交渉が不可欠となります。
いずれの方法を選択するにせよ、サブリース物件の取り扱いに長けた不動産会社に相談し、専門的な知見に基づいた戦略を立てることが、売却成功の鍵となります。


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