相続不動産の売却|登記義務化後の手続きや税金、控除を解説

相続した不動産の売却は、専門的な知識が求められ、手続きが複雑になりがちです。
特に2024年4月1日から相続登記が義務化されたため、売却の前提として名義変更の手続きが必須となりました。

この記事では、相続した不動産を売却するまでの具体的な流れから、売却時にかかる税金、そして節税に役立つ控除の特例まで、重要なポイントを分かりやすく解説します。

目次

【図解】相続不動産を売却するまでの8つのステップ

相続した不動産の売却は、決められた手順に沿って進める必要があります。
全体の流れを把握することで、計画的に手続きを進めることが可能です。
まず遺言書の有無を確認し、相続人と相続財産を確定させます。

次に、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意内容に基づいて相続登記を申請します。
ここまでが売却の前準備です。
その後、不動産会社へ査定を依頼し、媒介契約を締結して売却活動を開始します。
買主が見つかったら売買契約を結び、最後に代金の決済と物件の引き渡しを行い、翌年に確定申告をします。

売却の第一歩!2024年4月から義務化された相続登記(名義変更)とは

相続登記とは、亡くなった人から不動産を相続した際に、その不動産の所有者名義を相続人に変更する法的な手続きのことです。
これまでは任意の手続きでしたが、所有者不明の土地問題などを背景に、2024年4月1日から義務化されました。
不動産を売却するためには、売主が登記上の所有者でなければならないため、まず相続登記を済ませてから売買手続きに進む必要があります。

正当な理由なく相続登記を怠った場合、過料の対象となる可能性があるため、不動産を相続した際は速やかに手続きを行いましょう。

相続登記の申請手続きを4ステップで解説

相続登記の申請は、主に4つのステップで進みます。
まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本、固定資産評価証明書といった必要書類を収集します。
次に、収集した書類をもとに、法務局のウェブサイトにある記載例などを参考にして登記申請書を作成します。

書類の準備が整ったら、不動産の所在地を管轄する法務局へ持参、郵送、またはオンラインで申請します。
申請後、不備がなければ1〜2週間程度で手続きが完了し、登記完了証や新しい権利証である登記識別情報通知書が交付されます。

相続登記の際に必要となる書類一覧

相続登記を申請する際には、相続のケースに応じて必要な書類を準備する必要があります。一般的に、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や相続人全員の現在の戸籍謄本が求められる場合があります。また、不動産を相続する人の住民票が必要となることがあります。

遺産分割協議を行う場合は、相続人全員の印鑑証明書や、遺産分割協議で合意した内容を記した遺産分割協議書が求められます。

不動産に関する書類としては、最新の固定資産評価証明書が一般的に必要です。場合によっては、被相続人の登記済権利証(登記識別情報)の提出が必要になることもあります。

これらの書類は、遺言の有無や遺産分割協議の有無など、具体的な相続の状況によって異なるため、事前に確認することが重要です。

相続人が複数いる場合の遺産分割協議の進め方

相続人が複数いる場合、相続不動産を売却するには、まず遺産分割協議を開いて相続人全員の合意を得る必要があります。
この協議で、不動産を誰の名義にするか、あるいは売却して現金をどう分割するかを決定します。
不動産を共有名義で相続することも可能ですが、将来的に売却や活用をする際に共有者全員の同意が必要となり、手続きが複雑化するリスクがあります。

そのため、売却を前提としている場合は、代表者1名の名義に相続登記するか、「換価分割」という方法を選択するのが一般的です。
換価分割とは、不動産を売却した代金を分割する方法で、この内容を遺産分割協議書に明記します。

相続した不動産の売却時にかかる4種類の税金

相続した不動産の売却に際しては、主に5種類の税金が関わってきます。
まず、実家やマンション、アパートなどの建物を売却して利益が出た場合、その利益に対して「譲渡所得税・住民税」および「復興特別所得税」が課されます。
次に、不動産の名義変更や住宅ローンを完済した際の抵当権抹消登記を行う際に「登録免許税」が必要です。

さらに、買主と交わす売買契約書には、契約金額に応じた「印紙税」がかかります。
これらに加え、相続した遺産の総額が基礎控除額を超える場合には、不動産の売却とは別に「相続税」の申告と納税も発生する可能性があります。

売却益にかかる譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課される所得税および住民税です。
この譲渡所得は「売却価格-(取得費+譲渡費用)」という計算式で算出します。
取得費とは、被相続人がその不動産を購入した際の代金や手数料のことで、譲渡費用は売却時に不動産会社へ支払った仲介手数料などを指します。

この計算で算出された譲渡所得の金額に、不動産の所有期間に応じた税率を掛けて納税額が決まります。
所有期間が5年を超えている場合は、所得税15%・住民税5%(合計20%)に復興特別所得税(所得税の2.1%)を加算した税率が適用されます。所有期間が5年以下の場合は、所得税30%・住民税9%(合計39%)に復興特別所得税(所得税の2.1%)を加算した税率が適用されます。
この利益が出た金額に対して税金がかかります。

登記の際に必要な登録免許税

登録免許税は、不動産の登記手続きを行う際に国へ納める税金です。
相続を原因として不動産の所有権を移転する登記の場合、税額は「固定資産税評価額×0.4%」という計算式で算出されます。
例えば、固定資産税評価額が3,000万円の土地であれば、登録免許税は12万円となります。

この税金は、登記申請書を法務局に提出する際に、税額分の収入印紙を申請書に貼り付けて納付するのが一般的です。
司法書士に手続きを依頼する場合は、司法書士への報酬と合わせて支払います。

売買契約書に貼る印紙税

印紙税は、経済的な取引において作成される契約書や領収書といった特定の文書に対して課される税金です。
不動産の売買契約書もこの課税文書に該当し、契約書に記載された売買金額に応じて納める税額が変動します。
例えば、売買金額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、本来の税額は2万円ですが、現在は軽減措置が適用されており、2027年3月31日までに作成された契約書であれば1万円となります。

納税は、契約書に税額分の収入印紙を貼り付け、印鑑などで消印をすることで完了します。

【節税効果大】相続から3年10ヶ月以内の売却で使える2つの特例

相続した不動産を売却して税金が発生する場合、特定の要件を満たすことで節税効果の高い特例を利用できる可能性があります。
これらの特例には、相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内という期限が設けられている点に注意が必要です。
代表的な特例として「取得費加算の特例」と「空き家の3,000万円特別控除」の2つがあります。

相続後3年以内に売却を検討しているのであれば、これらの特例を適用できるか事前に確認し、計画的に売却を進めることで、譲渡所得税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。

①相続税の一部を取得費にできる取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続税を納付した人が、その原因となった財産を相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合に適用できる制度です。
この特例を利用すると、納めた相続税のうち、売却した不動産に対応する一定額を、譲渡所得の計算上「取得費」に加算できます。
取得費の金額が大きくなることで、課税対象である譲渡所得が圧縮され、結果的に譲渡所得税・住民税の節税につながります。

この特例を受けるためには、相続税を納税していることや期限内の売却など、いくつかの要件を満たした上で確定申告を行う必要があります。

②空き家の売却で最大3,000万円が控除される特例

「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」、通称「空き家特例」は、相続した実家が一定の要件を満たす空き家である場合に利用できる制度です。
この特例を適用すると、空き家売却によって生じた譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
主な適用要件として、被相続人が一人暮らしであったこと、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された居住用財産であること、売却代金が1億円以下であることなどが定められています。

要件が複雑なため、居住用財産の売却を検討する際は、国税庁のウェブサイトや専門家に詳細を確認することが重要です。

手元に残るお金を最大化するための3つのポイント

相続した実家などを売却する際、手元に残るお金を最大化するためには、単に高く売るだけでなく、税金や諸費用をいかに抑えるかが重要な鍵となります。
課税対象となる譲渡所得を正しく計算し、利用できる控除や特例を漏れなく活用することが節税につながります。
そのために特に意識しておきたい3つのポイントを理解し、計画的に売却準備を進めることが大切です。

取得費が不明な場合は売買契約書を探す

譲渡所得を計算する上で、被相続人が不動産を購入した際の「取得費」は非常に重要です。
この取得費が不明な場合、税務上のルールとして売却価格の5%を「概算取得費」として計上できますが、実際の取得費よりも著しく低くなるケースがほとんどです。
その結果、譲渡所得が過大に計算され、多額の税金を支払うことになりかねません。

まずは、被相続人が残した書類の中から、当時の売買契約書や領収書を探し出すことが最優先です。
もし見つからなくても、登記費用の領収書など他の資料から証明できる場合もあるため、取得費が0円だと諦めずに調査することが節税の第一歩となります。

相続案件の実績が豊富な不動産会社を選ぶ

相続不動産の売却は、通常の不動産売却とは異なり、相続税や譲渡所得税の特例、遺産分割協議など、法律や税務に関する専門的な知識が不可欠です。
そのため、不動産会社を選ぶ際には、単に査定価格の高さだけで判断するのではなく、相続案件の取り扱い実績が豊富かどうかを重視すべきです。
相続に精通した不動産会社であれば、司法書士や税理士といった専門家との連携もスムーズであり、複雑な手続きや節税に関する的な相談が可能です。

安心して売却を任せられるパートナーを選ぶことが、成功への鍵を握ります。

複数社に査定を依頼して適正価格を把握する

不動産の売却価格は、市況や物件の状態によって変動するため、1社の査定額だけではその価格が適正かどうかを判断できません。
不動産会社によって査定額に数百万円の差が生じることも珍しくなく、1社の情報だけで売却を進めると、相場より安く手放してしまうリスクがあります。
こうした事態を避けるためには、必ず複数の不動産会社に査定を依頼し、提示された査定額とその算出根拠を比較検討することが重要です。

一括査定サイトなどを活用すれば、一度の入力で効率的に複数社から査定結果を取り寄せることができ、客観的な視点で適正な市場価格を把握できます。

相続 売却に関するよくある質問

ここでは、相続不動産の売却に関して、お客様からよく寄せられる質問とその回答をご紹介します。

相続登記が終わっていない不動産でも売却活動はできますか?

売却活動自体は、相続登記が完了する前に開始できます。
不動産会社と媒介契約を結び、購入希望者を探すことは可能です。
しかし、買主が見つかり売買契約を締結し、最終的に所有権を買主に移転する登記手続きは、相続登記をせずに完了させることはできません。

したがって、売却活動と並行して、速やかに相続登記の手続きを進める必要があります。

売却で得たお金は、相続人全員でどうやって分けるのが一般的ですか?

「換価分割」という方法で分けるのが一般的です。
これは、不動産を売却して得られた代金から、仲介手数料などの諸経費や税金を差し引いた残額を、遺産分割協議で定めた相続割合に応じて各相続人が受け取る方法です。

不動産そのものを共有名義で相続するよりも公平に分割しやすく、後のトラブルを防ぎやすいメリットがあります。

売却にかかる費用は、誰がいつ支払うのでしょうか?

売却にかかる費用は、原則として不動産の名義人となった相続人が支払います。
仲介手数料や印紙税、登記費用などの諸費用は、最終的に売却代金から差し引く形で一括して精算されるのが一般的です。
支払いのタイミングは費用の種類によって異なり、手付金受領時や最終決済時など様々ですが、多くの費用は売却が完了する時点で支払われます。

まとめ

相続した不動産や土地の売却は、2024年4月から相続登記が義務化されたことを受け、まず名義変更を完了させてから進める必要があります。
売却して利益が出た場合には譲渡所得税などの税金がかかりますが、相続開始から3年10ヶ月以内に売却することで、節税につながる特例を利用できる可能性があります。
土地建物はもちろん、借地権のような権利も売却の対象です。

手続きの複雑さが相続放棄を考える理由になることもありますが、税理士や不動産会社などの専門家と連携して計画的に進めることが重要です。
株などの他の財産も考慮しながら、最適な遺産分割の方法を検討しましょう。
土地を更地にするかどうかも含め、早めに専門家へ相談することが、スムーズな売却につながります。

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